残業(時間外労働)

裁量労働とは何か? 【初級】

2016/09/03

 働くものが創造的な能力を活かして、仕事の進め方や時間配分を自分自身で行うという、自律的で自由度の高いフレキシブルな働き方などと厚生労働省がいっている制度です。
 しかし、一部の能力にすぐれ、要領の良い人のみが可能な制度ではないでしょうか。一般の働く人についていえば、大きな目標を与えられて長時間労働をしても残業代が不払いとなることもあるのです。
 手続きが煩雑(企画業務型:労使委員会設置など)なためという理由等で、導入が進んでいないようで、働くものにとっては良かったと思います。
 さて、裁量労働制には、企画業務型裁量労働制と専門業務型裁量労働制とがあり、実際に働いた労働時間ではなく労使委員会の決議や労使協定で決まったみなし労働時間が労働時間となります。

1.企画業務型裁量労働制

a.対象となる業務が決まっています。以下に示します。
①業務が所属する事業場の事業の運営に関するものであること
②企画、立案、調査、及び分析に関する業務であること
③業務の遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があると、「業務の性質にてらして客観的に判断される」業務であること
④業務をいつ、どのように行うか等についての広範囲な裁量が労働者に認められていること

b.導入には以下の手続きが必要です。
労使委員会の設置
②労使委員会での決議
 決議事項が決まっており(対象業務、対象労働者、みなし労働時間、健康・福祉確保措置、苦情処理措置、不同意労働者の不利益取り扱いなど)委員の4/5以上の多数決
③労働基準監督署へ決議の届け出
対象労働者の同意を得る

c.企画型裁量労働の実施

①みなし労働時間の適用
対象労働者には、実際に働いた時間ではなくみなし労働時間が労働時間となる
②労使委員会で決議した措置の実施
健康・福祉確保措置、苦情処理措置を実施する
③労働基準監督署へ定期報告
労使委員会で決議が行われた日から6ヶ月以内ごとに下記内容の報告
・対象となる労働者の労働時間
・対象労働者の健康及び福祉に関する確保する措置の実施状況

以上のような条件、手続きが決まっています。

2.専門業務型裁量労働制

a.対象となる業務が具体的に決まっています
(1)新商品若しくは新技術の研究開発又は人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務
(2)情報処理システム(電子計算機を使用して行う情報処理を目的として複数の要素が組み合わされた体系であつてプログラムの設計の基本となるものをいう。(7)において同じ。)の分析又は設計の業務
(3)新聞若しくは出版の事業における記事の取材若しくは編集の業務、放送番組若しくは有線ラジオ放送若しくは有線テレビジョン放送の放送番組(以下「放送番組」と総称する。)の制作のための取材若しくは編集の業務
(4)衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務
(5)放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサー又はディレクターの業務
(6)広告、宣伝等における商品等の内容、特長等に係る文章の案の考案の業務(いわゆるコピーライターの業務)
(7)事業運営において情報処理システムを活用するための問題点の把握又はそれを活用するための方法に関する考案若しくは助言の業務(いわゆるシステムコンサルタントの業務)
(8)建築物内における照明器具、家具等の配置に関する考案、表現又は助言の業務(いわゆるインテリアコーディネーターの業務)
(9)ゲーム用ソフトウェアの創作の業務
(10)有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析、評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務(いわゆる証券アナリストの業務)
(11)金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
(12)大学における教授研究の業務(主として研究に従事するものに限る。)
(13)公認会計士の業務
(14)弁護士の業務
(15)建築士(一級建築士、二級建築士及び木造建築士)の業務
(16)不動産鑑定士の業務
(17)弁理士の業務
(18)税理士の業務
(19)中小企業診断士の業務て

b.導入の手続き
①労働者代表の選出
専門業務型裁量労働に関する労働者の過半数代表 専門業務型裁量労働に関することを明確にしていることが必要
(過半数を組織する労働組合が存在する場合はその労働組合)
②労使協定を結ぶ
労使協定の内容
(1)対象業務(aで示した19業務)
(2)みなし労働時間
(3)対象業務を遂行する手段及び時間配分の決定に関して対象労働者に具体的な指示をしないこと
(4)対象業務に従事する労働者の労働時間の把握方法
把握した労働時間に応じて実施する健康・福祉の確保措置の具体的内容
(5)対象業務に従事する労働者からの苦情の処理の措置
(6)有効期限(3年以内が望ましい)
(7)(4)、(5)に関して記録を協定期間満了後3年間保存する

 協定は、労働基準法では最低限上記の内容を含むということであり、労働者に有利な内容を付加しても良いのです。専門型の裁量労働は本人の同意は不要となっていますが、「対象労働者については、本人の同意を必要とするし、不同意であったとしても不利益な取り扱いをしない」と入ても良いのです。

c.専門型裁量労働の実施

①みなし労働時間の適用
対象労働者には、実際に働いた時間ではなく、みなし労働時間が労働時間となる
②労使協定の確保措置の実施
健康・福祉確保措置、苦情処理措置を実施する
③労働基準監督署へ労使協定の届け出

締結の都度届け出(労使協定 3年以内)

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