一億総活躍社会(政府主導) 働き方改革 労働時間 残業(時間外労働) 非正規雇用
働き方改革実行計画 -その1-
2017/07/07
2017年3月28日に「働き方改革実行計画」(以下「実行計画」)が策定されました。これは、安倍首相が議長となり、有識者の意見を聞きながら「働き方改革実現会議」によりまとめられたものです。安倍首相は「働く人の視点にたって」といっているようです。すばらしいことが書いてあります。納得できる部分もありますが、これで良いのか考えてみてください。
私は、時間外労働の上限規制と労働生産性が一緒に論じられているところが問題だと思います。労働生産性を考えることなく、時間外労働の上限規制は必要です。
また、問題点は、働き方について、社会的なコンセンサスが取れているのかということです。政府と一部の有識者や経営団体、労働者団体との間の議論だけで決まっているようです。政労使合意の労働者を代表するのが連合なのですが、全労働者に対する組織率は15%程度です。従業員が100名未満の職場での労働組合の組織率は0.9%に過ぎません。それで政・労・使合意ということになるのでしょうか?!
「一億総活躍社会」と「働き方改革」の関係は、「「一億総活躍社会」とは?」を参考にしてください。
また、「実行計画」については、時間外労働の上限規制のことがよく取り上げられていますが、それでけだはありません。具体的に、9項目が掲げられ、検討テーマと現状が示され、それに対する対応策と具体的な施策がロードマップとともに示されています。
働き方改革の実現シート(P29)
ここでは、「実行計画」の総論というべき「1. 働く人の視点に立った働き方改革の意義」に書かれている内容をまとめてみます。
1. 働く人の視点に立った働き方改革の意義
(1)経済社会の現状
・4年間のアベノミクス(大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略)は大きな成果
名目GDP 47兆円増加,9%成長,ベースアップが4年連続実現しつつある,有効求人倍率が史上初めて47都道府県で1倍を超える
子供の相対的貧困は初めて減少に転じる
・我が国の経済成長の隘路の根本 隘路 ⇒ 狭くて通行の困難な道
構造的な問題
少子高齢化,生産年齢人口の減少=人口問題
イノベーション欠如
生産性向上の低迷,革新的技術への投資不足
・日本経済の再生の実現
投資やイノベーションの促進を通じた付加価値生産性の向上,労働参加率の向上
→ だれもが生きがいをもって、その能力を最大限発揮できる社会を創ること → 一億総活躍社会
労働参加率 ⇒ 生産年齢人口(16 歳 以上の人口から、高齢・疾病・犯罪などの理由で老人ホーム、病院、刑務所等の 施設におり働けない人を除いた者)に占める労働力人口(生産年齢人口のうち、働く意志を表明している人)の割合
・一億総活躍社会の国創り
一億総活躍社会になれば、 少子高齢化の課題も克服可能
家庭環境や事情は、人それぞれ異なるから
→ 画一的な労働制度の壁、保育や介護との両立困難の壁 → 壁を一つひとつ取り除くこと
(2)今後の取組の基本的な考え
・働き方改革
日本の企業文化、日本人のライフスタイル、日本の働くことに対する考えそのものに手をつける改革
・働き方改革を進めていくこと
多くの人が、働き方改革は、ワーク・ライフ・バランスや生産性にも好ましいと考えていること
この変革(改革)には、社会を変えるエネルギーが必要である
・安倍内閣
一人ひとりの意思や能力、置かれた個々の事情に応じて、多様で柔軟な働き方を選択可能とする社会を追求する
働く人の視点に立って、労働制度の抜本改革を行い、企業文化や風土を変えようとするもの
・働き方改革の目指すところ
働く人一人ひとりが、より良い将来展望を持ち得るようにすること
多様な働き方ができる中で、自分の未来を自分自らつくっていくことができる社会
意欲ある人に多様なチャンスを生み出す
・日本の労働制度と働き方の課題
労働参加、子育てや介護等との両立、転職再就職、副業、兼業などの課題がある
・労働生産性の向上を阻む諸問題
正規と非正規という不合理な処遇の差
↓
非正規労働者に正当な処遇でないという気持ちを起こさす
↓
頑張ろうという意欲をなくする
正規と非正規の理由なき格差を埋める
↓
自分の能力が評価されていると納得感
↓
働くモチベーションを誘引するインセンティブ
↓
労働生産性が上がる
・長時間労働
健康確保や仕事と家庭の両立を困難にする
少子化の原因、女性のキャリア形成を阻む原因、男性家庭参加を阻む原因
・長時間労働の是正
ワークライフバランスの改善
女性や高齢者も仕事に就きやすくなる→労働参加率の向上
経営者は、どのように働いてもらうかに関心を高める → 単位時間(マンアワー)当たりの労働生産性向上
・柔軟な労働市場や企業慣行を確立
単線型の日本のキャリアパス→ ライフステージに合った仕事の仕方を選択しにくい。
自分に合った働き方を選択して自らキャリアを設計でき、付加価値の高い産業への転職・再就職
→ 国全体の生産性の向上
(3)本プランの実行
(コンセンサスに基づくスピードと実行)
◯働き方改革実現会議
・総理が自ら議長となり、労働界と産業界のトップと有識者が集まって、これまでよりレベルを上げて議論する場
・同一労働同一賃金の実現に向けて、有識者の検討報告を経てガイドライン案を提示し、これを基に法改正の在り方について議論
・労働の是正については、上限規制等についての労使合意を経て、政労使による提案
・全体で9つの分野について、具体的な方向性を示すための議論の成果が実行計画
◯今後
・労働界、産業界等はこれを尊重し、労働政策審議会において本実行計画を前提にスピード感を持って審議
・政府は関係法律案等を早期に国会に提出すること
労働政策審議会 ⇒ 厚生労働大臣等の諮問に応じて、労働政策に関する重要事項の調査審議を行う。公労使三者構成の原則をとるように規定されている。