三六協定 労働時間 労働組合 労働者の過半数代表

三六協定に一文を入れることについて

2017/03/30

◯三六協定締結を労働者の過半数代表が行う場合
 三六協定を結ぶか結ばないかは、民主的な手続きで選出された労働者の過半数代表が自由に決められます。仮に、三六協定を結ぶことになったとしても、残業をしたくない労働者もいることでしょう。その場合、労働者の代表は次の一文を三六協定に加えることにしましょう。
 「労働者が理由の如何にかかわらず、時間外労働(残業)・休日労働を行わないとの意思を示したならば、この協定書の対象労働者としない」
 そして、この項目を使用者に認めさせることです。 
使用者に認めさせるということが重要
三六協定が必須の職場において、この一文の内容を認めないと三六協定は結ばないと労働者代表が主張すれば認めざるを得なくなるでしょう。 この一文が入ったとしても、締結時に使用者に確認しなければ法律的には問題が起こる可能性があります。

三六協定に関する通達、○改正労働基準法の施行について(基発昭和63年1月1日)を見ると
「7.その他  (5) 労使協定の締結
イ 労使協定の効力
 労働基準法上の労使協定の効力は、その協定に定めるところによって労働させても労働基準法に違反しないという免罰効果をもつものであり、労働者の民事上の義務は、当該協定から直接生じるものではなく、労働協約、就業規則等の根拠が必要なものであること。」

 これは、何を意味するかというと労働基準法上の三六協定は、労働基準法に違反しないための免責効果(刑事的な免責)が得られるものであり、この協定だけでは、個々の労働者に残業や休日労働を行わせることができるというものではないのです。すなわち就業規則に残業と休日労働の義務が規定されていないと、残業や休日労働の義務は生じないということです。

 ここで、三六協定に、「労働者が理由の如何にかかわらず、時間外労働(残業)・休日労働を行わないとの意思を示したならば、この協定書の対象労働者としない」と一文を追加した場合を考えてみましょう。 労働者の過半数代表に関する民事的な効力が労働契約法等にも謳われておらず、また判例もないのではないかと思われます。
三六協定の内容は「
時間外又は休日の労働をさせる必要のある具体的事由、業務の種類、労働者の数並びに一日及び一日を超える一定の期間についての延長することができる時間又は労働させることができる休日」(労働基準法施行規則第16条)であり、刑事的な免責をあたえるための条件です。
労働基準法で規定する労働者の過半数代表者は、労働者の集団的意思が民事的な項目についも集団的な意思としての個々の労働者に対して効力があるのかどうか、グレーゾーンではないでしょうか。そのためにですが、使用者に認めさせるということが重要最初に書きました。この一文を入れるときに使用者への確認が大切です。法律的にいえば、就業規則の変更や労働契約の変更ということです。
「この確認ができなければ、三六協定を結ばない」との主張ができれば、立派な労働者の過半数代表者といえるでしょう。

◯労働組合が三六協定の締結当事者の場合
 さて、ここで過半数を組織する労働組合(過半数組合)との三六協定に一文を追加した場合はどうかというと、協定事項には、刑事免責部分と民事的部分を含んだ労働協約となり、組合員にとっては、就業規則にどう規定されていようが、労働協約が優先規範的効力することになります。したがって「労働者が理由の如何にかかわらず、時間外労働(残業)・休日労働を行わないとの意思を示したならば、この協定書の対象労働者としない」という一文が、組合員には有効となりますが、過半数組合の組合員でない労働者には、労働協約の民事的部分、すなわちこの一文については、グレーゾーンではないかと思います。
 ここで、三六協定の締結組合がその事業場の3/4以上の労働者を組織する場合には、他の労働者を拘束することになり(一般的拘束力という)、この一文は有効になります。ややこしいですが、3/4以上の労働者を組織する労働組合と少数組合が共存する場合には、少数組合には一般的拘束力による労働協約の適用はないと考えられこの一文は有効にならないと思われます。

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