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特別条項付き三六協定

2018/09/14

■時間外労働に関する限定時間が決まっています。
「労働基準法36条1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準」(以下「限度基準」)(平成10.12.28労働省告示154号、最終改正:平成21.5.29厚生労働省告示316号)という告示により限度時間や限度時間を超える場合の特別条項について規定されています。
・一般の労働者の限度時間 別表:第1(第3条関係)

・1年単位の変形労働時間制(対象期間3ヶ月以上)
の対象労働者の限度時間 別表:第2(第4条関係)

しかし例外として下記のような内容が規定されています。

● 【限度基準の特別条項を規定する部分】  限度基準 第3条1
 「ただし、①あらかじめ、限度時間以内の時間の一定期間についての延長時間を定め、かつ、限度時間を超えて労働時間を延長しなければならない特別の事情(臨時的なものに限る。)が生じたときに限り、一定期間についての延長時間を定めた当該一定期間ごとに労使当事者間において定める手続を経て、④限度時間を超える一定の時間まで労働時間を延長することができる旨及び⑤限度時間を超える時間の労働に係る割増賃金の率を定める場合は、この限りでない。

この特別条項を規定する部分について検討をしてみましょう。

「あらかじめ限度時間以内の時間の一定期間についての延長時間を定める」
上記限度時間の表に記載されている、1週間、2週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月からどれか1つの期間と1年間で延長時間を定めることが三六協定で必要です ⇒ 原則的な三六協定(特別条項が発動とならない三六協定)であり、限度時間を超える上での前提
■協定する延長時間 (労基法施行規則第16条、限度基準 第2条)
・1日についての延長時間  ⇒ 限度時間なし
・1日を超え3ヶ月以内の期間についての延長時間 ⇒ 限度時間以内
・1年間            ⇒ 限度時間以内
たとえば一般労働者の場合であっては、2週間23時間、1年間300時間とか、1ヶ月42時間、1年300時間とか限度時間以内で延長時間を決めることになりますが、1日については、限度時間はなく、自由に延長時間を決められます。
■協定する期間の根拠(労基法施行規則第16条、限度基準 第2条)
・労働基準法施行規則第16条
 使用者は、法第36条第1項 の協定をする場合には、時間外又は休日の労働をさせる必要のある具体的事由、業務の種類、労働者の数並びに一日及び一日を超える一定の期間についての延長することができる時間又は労働させることができる休日について、協定しなければならない。
・労働基準法36条1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準(「限度基準」)第2条
 労使当事者は、時間外労働協定において1日を超える一定の期間(以下「一定期間」という。)についての延長することができる時間(以下「一定期間についての延長時間」という。)を定めるに当たっては、当該一定期間は1日を超え3箇月以内の期間及び1年間としなければならない。

(限度時間を超えて労働時間を延長しなければならない)特別な事情
「労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準の一部を改正する告示の適用について」(平成15.10.22 基発第1022003号)

■「特別の事情」とは、「臨時的なもの」に限るが、「臨時的なもの」とは、一時的又は突発的に時間外労働を行わせる必要があるもの
具体的には
・予算、決算業務  ・ボーナス商戦に伴う業務の繁忙  ・納期のひっ迫  ・大規模なクレームへの対応  ・機械のトラブルへの対応(厚労省「時間外労働の限度に関する基準」パンフレット)
・具体的な事由を挙げず、単に「業務の都合上必要なとき」又は「業務上やむを得ないとき」と定める等恒常的な長時間労働を招くおそれがあるもの等については、「臨時的なもの」に該当しない
・特別条項付き協定には、1日を超え3箇月以内の一定期間について、原則となる延長時間を超え、特別延長時間まで労働時間を延長することができる回数を協定することが必要であり、当該回数については、特定の労働者についての特別条項付き協定の適用が1年のうち半分を超えないものとする
「1日を超え3箇月以内の一定期間について」とは、上記①で書いた1週間、2週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月からどれか1つの期間です。
この期間について、例えば、2週間で労使協定を結べば、26週で1年間の半分となりますから、13回という回数を超えてはいけませんし、1ヶ月であれば、6ヶ月で1年の半分となりますから、6回となります。

③④労使当事者間において定める手続をへて特別延長時間(限度時間を越えた延長時間)まで延長が可能
・労使当事者が合意した協議、通告その他の手続
・当該一定期間ごとに当該特別の事情が生じたときに必ず行わなければならず、所定の手続を経ることなく、原則となる延長時間を超えて労働時間を延長した場合は、法違反となる。
「当該一定期間ごと」とは、1日を超え3箇月以内の一定期間(上記例では、1週間とか1ヶ月)と1年という意味でああり、その都度、労使当時者間で定めた手続きを行う必要があるということをいっています。
・協定届においては「手続」が特別延長時間(限度時間を越えた延長時間)まで労働時間を延長することができる要件である旨を明らかにし、その概要を記載する必要がある
▲「労使がその都度、協議して合意した場合に特別条項が発動できる」としたほうが良いと思われます。使用者が労働者代表(労働組合)に通知して発動できるとするのは避けるべきです。

⑤限度時間を超える時間の労働に係る割増賃金の率を定める
割増率2割5分(労基法第37条第1項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令)超える率とするように努めなければならない
45時間から60時間まで、あるいは360時間を超えても努力義務。労働者代表あるいは労働組合は、この努力義務に対して2割5分増しを超える割増賃金を三六協定に盛り込むことを要求できるが、事業主が拒否しても労働基準法違反にはならない。
▲割増賃金をアップすることを条件に労使協定締結することもできます。
■1ヶ月60時間を超える労働時間については、割増率が5割となる(中小企業は適用が猶予されている)ことが義務となっている。(労基法第37条第1項)
中小企業の定義

業種分類 中小企業基本法の定義
製造業その他 資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は
常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人
卸売業 資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社又は
常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人
小売業 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は
常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人
サービス業 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は
常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人
この特別条項付き三六協定は特別延長時間(限度時間を超える時間外労働時間)の限度はなく、定めれば1ヶ月300時間、年間1800時間でも可能である。合法的にむちゃくちゃなことが出来るのです。こんな特別条項付き三六協定は締結しないことが必要です。

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