労働基準法上の労働者とは 【中級】
2016/08/20
■労働基準法が適応される労働者とは
①職業の種類を問わず、②事業または事務所に使用され、③賃金を支払われるものをいいます。
(労働基準法 第九条 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。)
労働基準法上の労働者の判断基準(労働基準法上の労働者性)は、旧労働省 労働基準法研究会報告(労働基準法上の「労働者」の判断基準について)(1985年12月19日)で判断されます。
労働基準法上の労働者は、労災保険法上の労働者と同じとして判例や学説では判断されています。労災保険に適用になるかあるいは、労働基準法上のがあるかどうかは、この基準に労働の実態を当てはめて判断されます。
■監督署で労働者性が問題となる場合
監督署で請求や申告を行う場合、実態を上記研究会報告の判断基準にそって纏めておく必要があります。そして実態のどの部分が労働者性を強め、あるいは弱めているかを把握しておく必要があります。
■労働基準法上の労働者性に関する、高裁、最高裁判例
2016.3にまとめたものです。
◯労働者性肯定例
・実正寺事件 高松高判平8.11.29労判708号(寺の受付をしていた者)
未払い賃金の請求 宗教上の奉仕ないし修行であるという信念に基づいての勤務か労働者か
・安田病院事件 最判平成10.9.8労判745号
派遣の付添婦が病院に履歴書を提出、病院事務長の面接、病院経営者の判断で採用し病院との黙示の労働契約を認めたもの
・新宿労基署長事件(映画撮影技師) 東京高判平14.7.11労判832号
労災保険法上の「労働者」は,労基法上の「労働者」と同一のものである指揮監督下のでの業務の遂行、個々の仕事に関する許諾の自由が制約され、時間的場所的拘束が高かったこと等から労働者性を肯定した 労働者性の要素を詳しく検討し総合判断
・エーシーシープロダクション事件 最判平15.4.11労判849号
製作スタジオの中国人アニメデザイナー著作権法第15条1項「法人等の業務に従事する者」は、法人等の指揮監督下で労務を提供しているか、支払う金銭が労務提供の対価であるのか?原審は、形式的な自由を主たる根拠としているので解釈適用を誤っている。雇用関係が成立するとし、著作権は会社にある立場で原審差し戻し。著作権が争点、その前提として労働者性。労働者性について詳しく検討していない
・関西医科大学研修医(未払賃金)事件 最判平17.6.3労判893号(大学病院の研修医)
教育的な側面を有しているが研修医が医療行為に従事する場合には、これらの行為等は病院の開設者のための労務の遂行という側面を不可避的に有するのであり、労基法上の労働者
・三和サービス事件 名古屋高判平22.3.25労判1003号)
雇用契約を結んだ場合と同じ労働(実務研修)であり外国人技能実習生の最低賃金法の適用がなされた。労働者性について詳細に検討されていない。
・プラスパアパレル協同組合事件 福岡高判平22.9.13労判1013号
外国人技能実習生 最低賃金 労働者として肯定
◯労働者性否定例
・横浜南労基署長(旭紙業)事件 最判平9.11.28労判714号(傭車運転手)
運送という業務の性質上当然に必要とされる運送物品、運送先及び納入時刻の指示をしていた以外には、業務の遂行に関し、運転手が特段の指揮監督を行っていたとはいえない。時間的、場所的な拘束の程度も、一般の従業員と比較してはるかに緩やかであり、運転手が指揮監督の下で労務を提供していたと評価するには足りない。
別紙 労働判例百選 第8版に書かれたものをまとめています。 その他判例解説が多くされてもいます。
・NHK事件 東京高判平15.8.27労判868号(受信料集金受託人)
NHK受信料集金等受託者の労働者性
一審は労働者性を認めたが、控訴審は棄却 NHKと受託者との関係は一審と高裁ではほぼおなじであるが、判決が異なった
・藤沢労基署長事件 最判平19.6.28労判940号
マンションの内装工事に従事する大工の労働者性 労災の適用
報酬は、仕事の完成に対して支払われたもので、労務の提供の対価と支払われたものではなく、自己使用の道具の持ち込み、専属性に程度からも労働者に該当しない 横浜南労基署長(旭紙業)事件を踏襲
以上