労働者の過半数代表 変形労働時間制

1ヶ月単位の変形労働時間制(中級)

2018/12/04

1.1ヶ月単位の変形労働時間制とは
1ヶ月以内の一定期間(変形期間)を平均し、1週間の労働時間が40時間(特例措置の事業は44時間)の範囲において、1日8時間及び1週間40時間(特例措置の事業は44時間)の法定労働時間を超えて労働させることができる制度 1ヶ月以内の一定期間(変形期間) → 1週間を超えて1ヶ月以内の期間

2.1ヶ月単位の変形労働時間制導入の要件
労使協定又は「就業規則その他これに準ずるもの」により以下①〜④について具体的に定めることが必要です。
・労使協定は、労働者の代表や過半数を組織する労働組合が結ぶか結ばないかは自由です。
しかし労使協定を結ばない場合には、就業規則で決められてしまう可能性もあります。(三六協定とここが違います)
・「就業規則その他これに準ずるもの」
従業員10名以上 → 就業規則 当然周知義務があり。
従業員10名未満 → その他これに準ずるもの → 労基法施行規則 第12条
「常時10人に満たない労働者を使用する使用者は」〜「これを労働者に周知させるものとする。」
周知する → 文書
①変形労働時間制を採用することの定め
②労働日、労働時間、始業時間、終業時間の特定
変形期間における各日、各週の労働時間、始業・就業時間を予め定めておく
③変形期間の所定労働時間
変形期間の労働時間を平均して1週間の労働時間は40時間(特定措置の事業 44時間)を超えないこと
変形期間の労働時間の上限 = 40時間(特定措置の事業 44時間) × 変形期間の歴日数/7
(40時間(特定措置の事業:44時間))

変形期間を1ヶ月にした時の労働時間の上限
週の法定
労働時間
  月の歴日数
28 29 30 31
40 160 165.7 171.4 177.1
44 176.0 182.2 188.5 194.8
週の法定
労働時間
変形期間を20日にした時の労働時間の上限
40 114.3
44 125.7

④変形期間の起算日を定める

3.勤務ダイヤによる1ヶ月単位の変形労働時間制場合
8時間3交代制などの場合も含む
「就業規則においてできるだけ具体的に特定すべきものであるが、業務の実態から月ごとに勤務割りを作成する必要がある場合には、就業規則において各直勤務の始業終業時刻、各直勤務の組み合わせを考え方、勤務割表の作成手続及びその周知方法等を定めておき、それにしたがって各日ごとの勤務割は変形期間の開始前までに具体的に特定することで足り」(昭和63.3.14基発150号)、また、臨時の番方変更の場合には、「番方転換を行う場合の事由を就業規則に規定し、その規定によって労働者に事前にその旨を明示して番方転換を行った場合は、これにより4週間を平均して1週間の労働時間が1週間の法定労働時間を超えない限り法32条違反ではない」(昭和42.12.27基収第5675号、平成11.3.31基発第168号)

4.  1ヶ月単位の変形労働時間制を導入した場合の法定時間外労働
下記①〜③は法定時間外労働となり割増賃金が発生する
①1日の法定時間外労働 → 労使協定又は就業規則等で1日8時間を超える時間を定めた日はその時間、それ以外の日は、8時間を超えて労働した時間
②1週間の法定時間外労働 → 労使協定又は就業規則等で1週40時間を超える時間を定めた週はその時間、それ以外の週は、1週40時間を超えて労働した時間
③変形期間の法定労働時間の上限を超えた時間 → 変形期間の法定労働時間の上限=40時間(特定措置の事業 44時間) × 変形期間の歴日数/7
①、②、③の順で時間外労働時間を考えていき、所定時間外労働と法定時間外労働を区別して算出する
・所定時間外労働とは、法定時間内の所定外労働時間という意味で使っています。すなわち所定労働時間を超えるが、1日あるいは1週間の法定時間外労働時間を超えない労働時間でかつ変形期間の法定労働時間の上限を超えない労働時間のことです。
例1 変形期間を1日から月末の1ヶ月とし、また繁忙期が7/21から月末とする

変形期間1ヶ月の変形労働時間制における時間外労働
所定労働時間172時間 労働時間の総枠 177.1時間
時間 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
1                                                                  7/1-7/7 所定労働時間35時間
2 ←所定時間外労働           ↓所定時間外労働
3 ← 1日8時間超
4
5
6
7
8 ↓所定時間外労働                                                          7/8-7/14 所定労働時間35時間
9 1.1  1.9 ←177.1時間超
10 ←177.1時間超
11 ←177.1時間超
12   ← 1日8時間超
13 ↑177.1時間超
14  
15                                                                                              7/15-7/21 所定労働時間42時間
16
17 ←1日8時間超
18
19
20
21
22                                                   7/22-7/28 所定労働時間50時間
23
24
25  
26
27
28
29                                                                                              7/29-7/31 所定労働時間10時間
30
31
休日
                  1ヶ月の所定内労働時間  172時間
                  所定時間外労働時間(時間賃金×1.0)  5.1時間
                  法定時間外労働時間(時間賃金×1.25)  8.9時間

法定時間外労働があるため三六協定も必要でありその協定届を労働基準監督署へ届出しなければなりません。
5.労使協定又は「就業規則その他これに準ずるもの」とどちらが働く者にとって都合が良いのか?

労使協定 就業規則
・過半数代表者(or 過半数組合)との合意による労使協定の締結、有効期限を定めることが必須
・労働基準監督署への労使協定届の届出
・就業規則に変形労働時間制を導入する旨の定め
・労働基準監督署へ就業規則の変更届・意見書
・就業規則に変形労働時間制を導入する旨の定めと労使協定で締結する内容を定める
・労働基準監督署へ就業規則の変更届・意見書
労働者代表(or過半数組合)が自由に対象範囲や変形時間を決めることができる、有効期限を決められる 使用者が一方的に定めることができる
 働く者にとって ◎
 働く者にとって ×
「『労使協定により定めるか就業規則その他これに準ずるものにより定めるかについては、最終的には使用者が決定できるものであること。』(同前)というものであってみれば、就業規則で実施できるのにわざわざ手数がかかり不安定な労使協定による1ヶ月単位の変形制を取る意義は全くない」(安西愈「労働時間・休日・休暇の法律実務」(全訂七版P205-206))  ← 会社側弁護士の見解
労働者代表が労使協定で働くものに有利な条件を主張すると、使用者が就業規則で定めをすることにもなります。

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