社会保険加入・給付支援

 社会保険とは、広い意味(広義)では、公的医療保険、年金保険、労働保険を合わせたものをいいます。狭い意味(狭義)では公的医療保険、年金保険を言います。ここでは、広い意味での社会保険について、テーマを絞って説明しようと思います。国家公務員や地方公務員、私立学校の教職員を除けば、社会保険は、協会けんぽ(旧 政府管掌健保)、国民健康保険、国民年金、厚生年金保険、労働者災害保険、雇用保険です。大企業や業界団体の社員や職員が加入する健康保険組合や厚生年金基金があります。

■健康保険の加入支援

 事業者が健康保険(協会協会けんぽ等)に加入すべき事業所でありながら、加入していない(意識的にが多い)場合、国民健康保険で給付を受けることになりますが、ケガや病気の間の賃金補償や出産の時など賃金の補償がなされません。

 偽装請負などもあり働く人たちをどう加入させるのかを支援していきます。

■厚生年金・国民年金に関する障害年金の裁定請求

 精神疾患に関する障害年金の裁定請求の書類は、基本的な考え方を持っていないとうまく書けなかったり、うまく主張できなかったりします。専門家に任せたほうがいい分野と言えます。
 医師との面談の同行や行政への同行を行います。保険給付の審査請求、再審査請求を請求者と一緒にあるいは代理人として行います。

■労災保険の請求等

 労災保険の請求は使用者が嫌がることも多く、当初は使用者に知られないように証拠を集めることが必要です。労災請求をするとわかると協力しない使用者もよくみられます。事前に労働安全衛生に関する規則や社内の労働安全体制についても、調べておく必要があります。

◯精神疾患や病気の場合の労災認定には時間がかかる場合も多く、まず健康保険で治療を受けながら労災保険での請求(療養の給付か休業補償給付)を行います。そして、労災保険請求が認められれば健康保険給付を返還して労災保険給付を受けることになります。その病気は、最初診察を受けた時から労災保健に切り替えられます。

○労災保険の給付を受けるためには、業務遂行により被災(ケガや病気、障害あるいは死亡)したこと(業務遂行性)、並びにその被災の原因が業務を行う、あるいは行ってきたことに相当な因果関係(業務起因性)があることが必要です。

 そして、業務を行う主体は労働者(労働基準法上の「労働者」で定義)でなければなりません。

 また、通勤災害も給付対象ですが、業務遂行性や業務起因性は必要なく、自宅から職場まで合理的な経路および方法ということを満たさねばなりません。

 労災保険給付は、時として大変難しくなる場合もあります。その例を下記に示します。

○病気の場合は注意が必要

・災害性の病気と職業性の病気

 災害性の病気とは、業務上の一時的なアクシデントによって発病した疾病ことであり、職業性の病気とは継続した業務の遂行によって発病した疾のことです。職業性の病気については、業務と因果関係にある病気のが労働基準法施行規則(労基則)の別表第1の2で決められています。

 同じ腰痛であっても災害性腰痛と非災害性腰痛(職業性腰痛)とは認定の基準が異なり、通達が出され、わかりやすいパンフレット『腰痛の労災認定』が厚生労働省から出されています。

・職業性の疾病の例

 脳出血で、下半身が麻痺をして仕事ができなくなったことで労災保険給付がなされるかどうかというような問題があります。

 すなわち、高血圧について、普段から高血圧であったこと等、個人的な要素が強いか、業務との関係があり職業性の病気なのかという問題です。

 労基則別表第1の2で、「長期間にわたる長時間の業務その他血管病変等を著しく増悪させる業務による脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症、心筋梗塞、狭心症、心停止(心臓性突然死を含む。)若しくは解離性大動脈瘤又はこれらの疾病に付随する疾病」となっており、より具体的な認定基準が、厚生労働省の「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」という通達です。この通達で労働基準監督署は判断をするのです。

 少し前ですが、印刷会社での胆管がんが問題となり、一・二―ジクロロプロパンにさらされる業務による胆管がん、ジクロロメタンにさらされる業務による胆管がんの因果関係が認められ、労基則別表第1の2が改定されました。

 精神疾患に関しては、労基則別表第1の2「人の生命にかかわる事故への遭遇その他心理的に過度の負担を与える事象を伴う業務による精神及び行動の障害又はこれに付随する疾病」っとなっており、これも具体的な認定基準「心理的負荷による精神障害の認定基準について」いう通達があります。

・労働者性

 業務に従事している人は働くもの(労働者)かという問題です。働くものでなければ、労災保険は給付の対象にはならないのです。雇用形態もいろいろあります。事業主が労働者でないから認めないという場合もよくあります。労災保険や雇用保険の対象としていない場合です。

 すなわち事業主が委任・請負・派遣・パートタイマーなどといっている場合ですが、契約書で判断されるのではなく、業務遂行の実態で判断されます。

 この判断基準については、旧労働省の労働基準法研究会いう旧労働省の研究会報告が用いられるようです。(旧労働省 『労働基準法研究会報告 労働基準法上の「労働者」の判断基準について』1985年12月19日

この労働者性の問題は、労災問題だけではなく、解雇問題、休業補償の問題、安全配慮の問題等、労働者としての権利が認められるかという大きな問題です。

  世間でよく問題となる偽装請負問題も、この労働者性の問題です。

上記に記載したような労災保険の事案の請求、審査請求、再審査請求などを請求者と一緒にあるいは代理人として行います。

2017/03/12